【当事者の感想】栗原類「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」

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最初に正直に言ってしまうと、私は話題になった栗原類の著書「発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由」があまり好きではありません。
しかし、巷にあふれる凡百の発達障害関連書籍が言及していない、きわめて重要な点に触れた書籍であることも事実です。
私は彼とその母親の著書を読み、発達障害当事者としての周囲とのかかわり方について考えました。

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「発達障害って凄い能力があるんでしょ?」という善意

少し前に発達障害当事者どうしでやり取りをしていたとき、「友人との集まり等で、話の流れで大人の発達障害を告白したときの体験談」のような話になりました。
そのカミングアウトへのリアクションとして「そういうのあるよねー」と盛り上がったのが、このような反応です。

「えっそうだったの?いやでもさ、発達障害って凄い人いっぱいいるんでしょ?ビル・ゲイツとかスティーブ・ジョブズとか!」

話の流れとはいえ、「実は発達障害なんだ」と言われた側は戸惑うでしょうし、突然のことならリアクションに困るでしょう。
また、「でも発達障害の人って凄いんでしょ?」という言葉には励ましの意味が込められており、100%善意であることも理解しています。
しかし、そうは言ってもこのような言葉は、私を含む特殊な才能を持たない発達障害当事者に対し、鋭い刃となって甚大なダメージを与えてきます。

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発達障害だからといって特殊能力があるわけじゃない

「ビル・ゲイツはじめ天才と呼ばれる人が実際に発達障害なのかどうか」という点には諸説ありますが、それはそれとして、「発達障害」というキーワードから「非凡な才能」を連想する人は少なくありません。
しかし、私は自分の発達障害特性を検査によって理解したとき、納得すると同時に、「多くの同級生が『会社で普通に働く』ということを当たり前にこなしている中、自分はそれができなくなってしまった」という事実を一旦呑み込む必要がありました。
そのうえ、何か特殊な技能を持っているわけでもありません。

「自分に普通のことができないのは発達障害によるものだったのだ」という安心感と同時に突きつけられる、「だからといって非凡な才能を持った特殊な人間でも全くないけどな!」という現実。
このプロセスを乗り越えた人間にとって、「大丈夫だよ!発達障害って凄い才能があるんでしょ?」という善意は、なかなかの攻撃力で傷をえぐってきます。

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この本から得られたもの

で、やっと本題に入るのですが、見た目も中身も平凡以下の自分としては、栗原類の本の「輝ける場所をみつけられた理由」というタイトルにツッコミを入れずにはいられませんでした。
「そりゃ君は発達障害だけど、『身長180cmオーバーで何を着ても似合うハーフ』という激レア属性を持ってるからこそモデルになれたんだろうよ」と。
それだけに、最初は読む気が起きませんでしたし、今も再度手に取ろうとはあまり思いませんが、その一方でこの本はきわめて重要な示唆を与えてくれました。

最近の発達障害を取り巻く、「発達障害は個性」あるいは「周囲の理解が何より大切」という感じの言説は、一応まあ事実とも言えるものの、私は最も重要なのはあくまで「当事者本人が周囲にあわせる努力をすること」だと思っています。
だってそれができるようにならないと一生自立できないですよ。
自戒を込めてですが、なんでも障害を言い訳にしてずっと生きていけるわけがないですから。

この本では、彼のこれまでの人生において、自立に向けたトレーニングが重要視されてきたことを示す描写が多く出てきます。
人との付き合いは生きていくうえで避けられないし、やりたくなくてもやらなければいけないことは多い。じゃあどうすればいいかというと自分が変わる必要がある。
その点を認識する上で、特に若い発達障害当事者に読ませるのに非常に適切な、数少ない当事者エッセイ本だと思います。

彼をテレビ番組で見ていると、(もちろん編集は入っているでしょうが)極めて慎重に言葉を選んでしゃべっている印象を受けます。
これも、「相手に不快感を与えないよう注意する」というトレーニングの賜物ではないかと思います。
また、「音楽は好きだけど、子供特有のガーガーうるさい歌い方が嫌で音楽の時間は苦痛だった」というような、子育て系の本には意外と出てこない「当事者特有のあるあるネタ」も出てくるので、発達障害当事者が見ている世界を知りたい人にもおすすめです。

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栗原類の母の子育て論

本書には母親である栗原泉(彼女もまた発達障害当事者です)の寄稿もあり、この部分は実際に発達障害の子供を育てているお父さんお母さんにぜひ読んでほしい内容になっています。
母親である自分自身も当事者でありながら、息子の類に対しては「障害特性がまったく違う、あくまでも別の人間」として接する姿は、同じ発達障害親子として考えさせられるものがありました。

2018年に発売された彼女の著書「ブレない子育て 発達障害の子、「栗原類」を伸ばした母の手記」にも「人の2倍3倍努力して当たり前、それだけやってようやく人並み」という趣旨の記載があり、発達障害児を社会に送り出すことまで見据えた子育て論をより詳しく知ることができます。
「発達障害を持つわが子にどう接したらいいか」という点を、当事者でも納得できる視点で分かりやすく書いた、現時点では希少な本と言っていいでしょう。
(まあ正直これも「こんな母親がよかったな」というダメージを与えてくる本ではありますが。)

なお、発達障害の関連書籍についてはおすすめの本を前にも紹介しています。

【厳選3冊レビュー】発達障害当事者としてオススメの本
以前書いたとおり、私が発達障害の関連書籍を読むようになったきっかけは、私自身のためではなく、発達障害グレーゾーンの長男のためでした。 最近は発達障害の本が多く出版されており、「発達障害の子供を育てる親に向けた本」だけでなく「大人の発達障害」...

私は発達障害関連の書籍を山ほど読みましたが、まともに参考になった本は数冊しかありません。
発達障害当事者をおかしな方向に感化するような本が流行らないことを願っています。

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