ウワサの保護者会「発達障害かも…どうすれば?」感想 & 当事者の体験談

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今月、NHKが「発達障害って何だろう」というキャンペーンを行っていますが、その中でも一番気になっていた番組が、Eテレ「ウワサの保護者会」の、「発達障害かも…どうすれば?」の回です。
本放送は見逃してしまったのですが、今日やっていた再放送で見ることができました。
この回についてはSNS等でも反響が大きかったようで、様々な意見を目にしたのですが、当事者として思うところを書き残しておこうと思います。

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親戚の当事者、Aさんのこと

まず、私はASD(自閉症スペクトラム)のグレーゾーンという診断を受けている、30代の「大人の発達障害」当事者です。
(※追記:後に正式な診断がつきました)

【30代の発達障害検査】セカンドオピニオン検査とその診断結果
過去に受けた発達障害検査で「ASD(自閉症スペクトラム)傾向あり、ただし診断はつかないグレーゾーン」という結果だった私ですが、先日、別の専門医療機関にて2度目の発達障害検査を受けてきました。 結論から先に言うと、グレーゾーンではなく発達障害...

幼少期から色々な困りごとを抱えていたことについては、過去記事につらつらと書いています。
カテゴリー:幼少期~学生時代の話
そして、私の長男も広汎性発達障害グレーゾーンです。

しかし、今回は私や息子のことより、主に私の親戚(以下、Aさんとします)の体験を紹介したいと思います。
成人してから高機能自閉症と診断されたAさんの特性は、簡単にいえば私の症状をかなり重くしたような感じで、対人コミュニケーションに大きな困難を抱えています。

現在40代の彼は障害者雇用で働いていますが、そこに至るまでには地獄のような日々がありました。
今回の「ウワサの保護者会」を見て、私はAさんのことを思い出さずにはいられませんでした。

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今回の番組の内容

「ウワサの保護者会」は、尾木ママこと尾木直樹氏が聞き役となり、小中学生の保護者が子育ての悩みについて語り合うという番組です。
今回の「発達障害かも…どうすれば?」には、発達障害と診断された子供のお母さんと、子供が発達障害かもしれないけど病院には行っていないというお母さんが登場しました。
大まかな内容は番組のオフィシャルブログでもご覧いただけます。

子供を発達障害の診断に連れて行かない理由は、簡単にまとめると以下のような感じでした。
・失敗から学べるようになってほしい、障害を言い訳にしてほしくない
・疑いがあることすら親戚にも言っていない、正式に発達障害だと診断されたら受け止める自信がない
・成長に従ってなんとかなるかも、「普通」レベルのことができるようになってくれたらそれでいい

これに対し、尾木氏や発達障害を受け入れた側の親の意見はこんな感じ。
・親としての立場ではなく、本人が何に困っているかに目を向けなければならない
・発達障害の診断は子供の特性にあった対応の仕方を親が知るためにも必要
発達障害に関係なく、子供の困りに寄り添うのが親としてやってあげるべきこと

また、当事者である子供自身のエピソードとして、以下のような話も出てきました。
・発達障害児として放課後デイサービスに通うことで初めて「自分の居場所ができた」と感じた
・発達障害と言われても特にショックは無く、むしろ自分が困っている理由がわかってよかった

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番組を見た感想

この番組について、ネット上では特に子供が発達障害かもしれないと分かっていながら病院に連れて行かない親への否定的な意見を多く目にしました。
私自身、このお母さんの気持ちは理解できなくもないものの、正直いろいろ言い訳してるけど世間体を気にしてるだけじゃないの?と感じました。
そして、こういう親の態度が一番子供を不幸にするよなと思いながら番組を視聴しました。

私の話をすると、自分の幼少期には「発達障害」がまだ知られていなかったこともあり、困りごとに関してはほとんど親の理解を得られませんでした。
二次障害である鬱症状に長年苦しめられ、30歳を過ぎてから受けた発達障害検査で、ようやく診断結果という「自分の説明書」を手にしたことで、それまで大変苦労していたストレスコントロールがようやく少しだけできるようになったのです。
正直、10年前、いや20年前にこの「自分の説明書」が欲しかったですし、その説明書を自分の親や学校の先生と共有できていればどれだけ楽だったかと思っています。

健常者扱いされ続けたAさんの地獄

そんな私など比べ物にならないほど苦労したのが、最初に書いた私の親戚のAさんです。
Aさんの障害の度合いは、見る人が見れば一目で分かるレベルです。

にもかかわらず、彼は周囲が要求する「普通」という名のレールに必死にしがみつき、大学に進学し、卒業後は正社員として就職、一時期は実家を離れて一人暮らしをしていました。
しかし彼は、その会社で上司から金銭を騙し取られます。
そのうえ、彼は最終的に不当解雇されたにもかかわらず、裁判の段階になっても上司が悪事を働いていたことを理解していませんでした。

Aさんは、本人の特性に反して「普通の大卒」になってしまったがために、「障害者雇用で働く」という選択肢にアクセスできませんでした。
彼の両親は、彼が「詐欺にあっても気付かないレベル」であることに直面してようやく「適切な教育を受けさせてあげるべきだった」と後悔していました。
そして彼は長い回り道の末にようやく精神障害者手帳を取得し、今は障害者雇用でのびのびと働いています。

子供の障害から目をそらすという罪

Aさんの話は「極端な例だ」と思われるかもしれません。
しかし、子供の特性を無視して「普通はこれぐらいできるはず」を要求し続けることは、子供にとってそのときに負担になるだけでなく、将来に甚大な悪影響を及ぼします。
親がいくら「子供が発達障害だ」と困った顔をしたところで、一番困っているのは親ではなくて当事者である子供自身なのです。

自分の子供が「発達障害」というレッテルを貼られるのが嫌だ、というのは完全に親のエゴです。
「発達障害の子」というカテゴライズにより、学校の先生をはじめとした周囲の大人が適切な対応を取ってくれるようになれば、それはむしろ本人の生き辛さを軽減する方向に働きます。
現に私の長男も、発達障害だという前提があるおかげで幼稚園でも適切な対応をしてもらえており、療育やリハビリの効果もあって徐々に社会性を身に付けていますが、「発達障害」という前提がなければただの問題児扱いでしょう。

「発達障害が疑われるわが子を発達障害であると認めない」という親の態度は、すなわち子供に「ただの出来ないやつ」というレッテルを貼るのと同じことです。
本来受けられるはずの支援も、学校からの配慮もなく、失敗は全て本人の努力不足に帰結させられます。
「お子さんは発達障害ですね」と言われて親がショックを受けるとしても、本人や先生は「発達障害だ」と言われた方が助かるのです。

私は、「誰が何と言おうとうちの子は発達障害なんかじゃない!」という親の態度は虐待に等しいと思っています。
「発達障害検査を受けさせたら子供が恥ずかしい思いをするかもしれない」?
自分が恥ずかしいだけでしょう。

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